校園長ブログ

今につながる歴史をしっかり見つめ、 仲間とつながり、周りの人たちとつながり、 この先を見すえる目とこころを耕して下さい。 ~和光小学校を巣立っていくみなさんへ 卒業式式辞~

 1月中旬、映画『この世界の片隅に』のことをお伝えし、2ヶ月が経ちました。ちょうど戦時中、国民学校に通っていた母に、この映画の話をした直後、母が急死しました。先週末、四十九日法要を終え、ようやく一区切りついたところです。

 

 和光幼稚園、和光小学校は3月15日に卒業式を迎えました。ひとりひとりに卒業証書を手渡しながら、巣立っていく子どもたちがこころから安心して暮らせる世の中をつくらなければ、と強く感じていました。

 

 和光小学校の卒業式式辞をお伝えします。

  

 今ここに立ち、自分の言葉で小学校生活を語ってくれた卒業生のみなさん、いよいよ和光小学校での最後の時を迎えようとしています。

 この6年の間には、楽しいことばかりではなく、つらいこと、悲しいこともあったことでしょう。いろいろなことを乗り越え、成長したみなさんの姿、今日は輝いて見えます。

 

 みなさんが和光小学校に入学したのは2011年4月でした。そのちょうど1ヶ月前、日本は東日本大震災、それに続く東京電力福島第1原子力発電所での事故に見舞われました。たくさんの尊い命が奪われ、避難生活を余儀なくされた人たちの中には、未だにふるさとに帰ることができない人たちも多くいます。

 4月当初はまだ余震が繰り返され、この東京にも原発事故による放射能の影響が広がっていました。子どもたちのいる家庭の中には、東京を離れた方たちもいます。

 これまで当たり前だと思ってきたことが当たり前ではなくなり、起こるはずがないと思っていたことが目の前で起こってしまったという現実の前に、日本中の人たちが立ちすくみ、行き場をなくしてしまったように感じていました。

 みなさんの小学校生活は、そのような、時代の大きな転換点の中で始まったのです。

 食べるものも、遊ぶ場所も、おうちの人たちは不安な思いを抱えての小学校生活のスタートではありましたが、みなさんのお父さん、お母さんはこの和光小学校に希望を託して下さいました。

 

 あれから6年、仲間とともに学び、遊び、充実した日々を過ごしたことがみなさんが語ってくれたことばから伝わってきました。

 和光小学校は「子どもたちが主人公」の学校です。和光を訪れる多くの方が、「のびのびしている」「生き生きしている」と、みなさんの姿を見てそのように表現されるのは、学ぶ価値がある学習、夢中になる学習を、自分たちから学んでいるからでしょう。

 そして、そこに、共に学ぶ仲間がいることが、“楽しさ”を何倍にもしているのだと思います。

 

 そのことに、改めて気づかされることがありました。

 昨年秋、和光中学への進学を巡って2組のみなさんから伝えられたことばは、この6年間で、友だちの姿をまるごと受け止め、共に学ぶこと、共に生活することで絆を深め、おたがいに成長し合ってきたという、クラスの仲間に対する強い思いでした。

 それは、“同じことができること”、ではなく、“同じ体験をすること”が、人と人とのつながりを深め、理解し合うことにどれほど大切であるかということを示すものであり、私たちがこれまで持っていた「学校」の姿を改めて考え直すことを迫られるものでもありました。

 しょういくんは、「幼稚園から和光で学び、いろいろなことが根付いていることを実感しました。人を一つのことで判断しないこと、大切なものはどこにあるか気づいていくことができました」と語ってくれました。仲間のことをこれだけ語れる6年生が育ったことを、私は誇りに思います。

 

 さて、今年はちょうど和光小学校が総合学習「沖縄」に取り組んで30年、日中韓三カ国交流を始めて10年の節目の年でした。みなさんは、30回目の沖縄学習旅行を体験し、10周年目の三カ国交流のホスト国として、中国、韓国からの友だちを受け入れ、交流しました。 

 

 沖縄で体験を語って下さってきた証言者の方たちは年々ご高齢になり、お話を聞くことが難しくなってきています。そのことも感じながら、みなさんはじっと耳を傾けていました。

 先週行われた「6年生を送る会」で、そうじろうくんが「沖縄では証言者のお話をしっかり聞いて下さい。証言者の方はいのちを削って話してくれます。」と在校生に語りかけました。

 今回初めて和光小学校の6年生に証言をして下さった、玉木利枝子さんから、みなさんが送ったお礼の手紙に対してお返事が届きました。その中に、「すばらしいみなさまの平和宣言、今感じたこと、決意したことを忘れずに、これからの日本の平和は自分たちの肩に背負っているのだと、しっかり心に刻み込んで下さい。・・・このような学校がある限り、日本の平和はきっと守られていくことでしょう。」とありました。

 また、ナガサキでの被爆者である木村徳子さんからは、やはりみなさんの感想文に対して「知ること、想像すること、考えていくことがその人を作っていくのだなあと深く感心しました。」「核兵器を作るのも使うのも私たち人間だけど、それをやめさせることも私たちにはできるのだ、というメッセージについてもよく理解して“人間が起こすことは、人間しか止められない”と自分の言葉で書いてもらえたことが、私に強いメッセージとなって戻ってきました。とてもうれしかったです。」というお手紙が届いています。

 30年目の節目の年に「沖縄」を学んだみなさんに、とりわけ戦争を体験した方たちは、希望を託しています。

 

 一方、和光小学校が交流を続けているミラルトゥレ学校がある韓国、グリーンタウン小学校がある中国とは、過去につらい歴史があったこと、社会科で学習したことと思います。今なおその歴史と向き合おうとせず、偏見と差別意識を持つ人たちもいます。

 私たちが生きている今は、歴史の積み重ねから成り立っています。これまでの歴史を知ること、そこに向かい合うことで、目の前の現実がより色濃く見え、未来につながる道も明らかになってきます。

 みなさんの学習旅行に同行取材をした琉球新報客員編集委員の藤原さんは、『つながっていく沖縄 和光小学校の「学習旅行」』としてコラムを寄せていました。

 その最後に「小学生と、これに応え続けてきた沖縄の人びととの交流は、人を理解しようとする想像力と、つながっていこうとする優しさに支えられている。今回その一端に触れ、他者を尊重する心とは学び合いの中でつくられることを、改めて強く思う。」と結んでいます。

 

 和光小学校を巣立っていくみなさん、今につながる歴史をしっかり見つめ、仲間とつながり、周りの人たちとつながり、この先を見すえる目とこころを耕して下さい。

 

 卒業生のご家族のみなさん、お子さんのご卒業おめでとうございます。在学中には親和会活動はじめ多くのご協力を頂きましたこと、この場をお借りして、こころより感謝申し上げます。

 

 卒業生のみなさん、みなさんのことは家族の方たちをはじめ、先生たち、友だち、・・・多くの人たちが応援しています。どうぞ、自分の夢に向かって、大きく大きく羽ばたいていって下さい。

 卒業、ほんとうにおめでとうございます!

 

 2017年3月15日

和光小学校 校長 北山ひと美

 

 

 

 

日時: 2017年3月16日 08:30

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